映画「180°SOUTH」の公開にあたって、出演者のジェフ・ジョンソン、キース・マロイにインタビュー

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自然を愛するスペシャリストたちの“人生の旅”を描くライフ・ドキュメンタリー映画「180°SOUTH」の公開にあたって、出演者のジェフ・ジョンソン、キース・マロイが来日。映画では語られていない部分について話を聞いた。


映画「180°SOUTH」の公開にあたって、出演者のジェフ・ジョンソン、キース・マロイが来日した。ジェフはパタゴニアのスタッフフォトグラファーでありこの映画の主人公。キースはこの映画の監督・脚本を手掛けたクリス・マロイの弟で、クリス同様にパタゴニアのアンバサダーであり、ワールドツアーを転戦していたプロサーファー。

映画を試写させてもらっていた私にとっては、2人の冒険家はテレビに頻繁に出るアイドル、スターよりもヒーローであり、その2人に会えるということで大変緊張したが、冒険家はやはりナチュラルで気さくなサーファー。彼らのアドベンチャーは時に過酷で命がけの部分もあるだろうが、人に対しては包み込むような優しい目で語ってくれる。映画自体がメッセージで、映画を見てそれぞれが感じてほしいので、映画では語られていない部分についてショートインタビューをさせてもらった。


ー今回の映画はアメリカにおけるアウトドアカルチャーの先駆者と言えるパタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードとザ・ノース・フェイス創業者のダグ・トンプキンスが40年以上前に南米パタゴニアを旅した場所をジェフ・ジョンソンが仲間とともに再び旅をするドキュメンタリーですが、イヴォン、ダグとの出会いについて聞かせてもらえますか?


KEITH.JPGKeith Malloy(以下K):僕はイヴォンの住んでいるカリフォルニアのヴェンチュラの町で育ったんだ。なので、シュイナード家のことは耳にしていた。2001年に全く偶然にシュイナード家の隣に住むことになって、そこから仲の良い友人になったんだ。不思議な縁だったね。ダグについてはもちろん知っていたけど、この撮影で初めて会った。

JEFF.JPGJeff Johnson(以下J):僕がイヴォンと初めて会ったのは2004年だった。それまでは僕の撮った写真がパタゴニアのカタログとかに使われたり、商品開発に少し携わったりして、交流はあったのだけど。ある日突然、イヴォンから連絡があって「友人たちとサーフトリップに行くから一緒に来て写真を撮ってくれないか」という依頼を受けたんだ。タヒチの上にある島だったのだけど、僕がイヴォンに「旅の1週間前に行って真珠を育てる場所を見にいかないか」と提案して、そこに行ってから長い友情が始まったんだ。結局、イヴォンの会社で働くことになったんだけど。ダグについてはキースと同じで、彼のことは知っていたけど今回の撮影でパタゴニアに行って初めて会ったんだ。イヴォンとダグが1968年に映像を撮った場所で2人に会ったということは意義深かったね。

ー映画で今のイヴォン、ダグの2人の生き方が見られるけれど、実際に交流して2人をどう感じてる?


K:イヴォンはサーフィンも食に関しても熱意があって一緒にいて楽しい人で、毎回いい時間を過ごさせてもらっている。僕にとって彼と同じ時間を共有できることは今までもそしてこれからも大切なことなんだ。富と成功を得ている人だけど、一緒にいてそういうことを感じさせないのも素晴らしいね。それと、イヴォンが考えている理念、会社で言っている理念そのままに生きている人で、すごく尊敬しているよ。みんなが考える以前からビジネスにしても環境保全にしても最先端の考えを持ってやってきた人だよ。個人的な意見かもしれないけど、歴史の本に載るような人だと思う。ダグに関してはイヴォンほど知ってはいないけど、興味深い人だね。彼が得たお金を南米の環境保全に使っていることもとても尊敬できることだよね。

J:ダグとイヴォンはお互い全く別のタイプだと思う。イヴォンは見た目からわかるとおり、しぐさとかやることがカジュアルだね。自分が言った理念とか哲学を必ず実行するところを尊敬している。純粋にクライマーであり、サーファーであり、旅に出るのが大好きで、キャンプファイアーの横でみんなにいろんな話をしたり、人との交流を大切にしている人だよ。ダグは撮影の時に初めて会ったのだけど、洋服、しぐさなど、こだわりを持っていて真面目な人だね。最初に会った時はちょっと圧倒される雰囲気があった。でもこの映画で一緒に山を登った時に、最初の印象が取り払われるぐらい彼の素の素敵な笑顔を見たんだ。みんなでクライミングをしているのを楽しむ、これまでとは別人の彼を見れて光栄だったし、幸運だった。イヴォンとダグは昔からの大親友でその2人の交流が見れて最高に楽しかったし、こういう経験ができたのは自分にとっては価値がつけられないほど貴重なことだった。シンプルな生き方をしている2人を真近で見れたのは素晴らしい機会だった。

ー映画の中で1番心に残るシーンは?


K:それはたくさんあるよ。特にと言えば、僕にとっては(ヨセミテの岩壁)エル・キャプタンに登った映像だね。今までの人生において最も精神的にも体力的にもきつい一週間だった。もう一つはみんながコルコバド山を目指して行っている中で、自分は残ってサーフィンをしていたシーン。水、空気の美しさと誰一人いない貸し切り状態の海でのサーフィンは思い出深いよ。映画を見るといつもあの時のことを思い出すよ。

J:6ヶ月の撮影期間中、あまりにもいい瞬間が多すぎて自分にとって具体的にこのシーンって選ぶのは難しいよ。とにかく大親友たちと一緒にいろいろなことを経験できたこと、同時に新しい友達とも出会えたことが素晴らしかった。ディレクター、料理担当、テクニカル担当、ドライバー、この映画に携わった人みんながこの旅で影響を受けたと思う。彼らの顔を見ると、旅の前と後では全然違うし、人生そのものに影響をするような素晴らしい経験をみんながしたということを確信しているよ。仲の良い人たちとこのような作品が作れたことが1番の宝物だね。

ー最後にSurfMediaの読者にメッセージを!

K:この映画を見てぜひ大勢の人が冒険、旅に出たいというインスピレーションを受けてもらえればと思う。自分は今まで人生において大切なレッスンを受けたのは、自然や他の文化に触れるこういう旅を通してだったんだ。皆さんもぜひ旅を計画して旅に出て下さい。もう一つは地球上、本当に美しいところがいっぱいあるので、ぜひ自分の目で見てほしい。本や雑誌、インターネットでそういう風景を見ることは可能だけど、実際自分の目で見て肌で感じることは全然違うので。

J:この映画では様々なメッセージが存在していて、それは中には意図的に伝えたかったもの、中には偶然伝えられたものがあるんだ。誰が見ても何らかのメッセージ、意味を見いだして持って帰って自分のものにできる要素がたくさん詰まっていると思うので、ぜひ楽しんで下さい。





映画を見てからインタビューの場所である原宿に向かったのだが、バーゲンの時期のせいか人で溢れる道を歩きながら、この映画のイースター島やパタゴニアの自然の余韻に浸っていた私は映画の中の言葉「都会に住む人たちは音楽プレーヤーで耳を塞ぎ、そうやって環境問題から自分を閉め出す。自然を理解しなければ大切にする心も育たない」「アメリカのゲーマーが消費する電力は(チリの)1つの都市に匹敵する」が頭から離れなかった。

彼らが行ってきたパタゴニアとはかけ離れた日本の都会に来て違和感があるのではないかと思って、インタビューの際にまずお約束の質問だが、「日本は初めてですか?」と聞いてみたら、2人とも日本には何度も来ているとのこと。キースはプロサーフィンのコンテストで90年代半ばから後半にかけて来ていて、ジェフは以前フライトアテンダントの仕事をしていて1ヶ月に3回~5回ぐらい日本に来ていたという。

そして自分がこの映画を見てここに来る時に違和感を感じたことを話し、この映画の撮影後普段の生活に戻ってどうだったかを聞いてみたところ、ジェフはやはり家に戻ってショックを受け最初は毎日の生活についていけなくて、2ヶ月ぐらい砂漠に行ってサーフィンしたりクライミングしたり、徐々に日々の生活に戻していったという。それぐらい今の生活とは違う経験をした彼らの南米の旅はタイトルの「180°SOUTH」にもあるようにイヴォンとダグの人生を180°変えた旅と同様な旅だったのだろう。

映画の中の「イースター島のモアイ像が倒れているのは僕たちへの警告だ」という言葉が心に残る。そして最後の言葉「自然が消失すれば人類も絶滅する」はこの映画を見た人に対するメッセージではないだろうか。

この映画の彼らの旅を通して何かを感じ、それぞれが地球を感じる旅に出よう!


インタビュー、取材・文: 米地 有理子

『180°SOUTH/ワンエイティ・サウス』1/22(土)より、渋谷・シネクイントにて【20日間限定】ロードショー!ほか全国順次公開!


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□STORY
1968年、2人の若きアメリカの青年が、バンでカリフォルニアから南米パタゴニアの奥地未踏の山と波を探しに旅に出た。彼らはそこで言葉にすることが出 来ない程の美しい自然を目にする。数々の冒険(旅)をしてきた2人にとって、その1968年のトリップは、未だに“人生最高の旅”だと言う。
その1人はパタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード、もう1人はシュイナードの親友でノースフェイス創業者のダグ・トンプキンスである。そして、若きア メリカの冒険家ジェフ・ジョンソンはその伝説的な旅を記録映像で見て以来、10年間、2人の足跡をたどることを夢見ていた。2007年、その夢が叶い、イヴォンと一緒に新たなパタゴニアの旅をはじめた。彼らがそこで見たものとは?

□監督・脚本・編集:クリス・マロイ/プロデューサー:ティム・リンチ 
□音楽プロデューサー:エメット・マロイ/エグゼクティブ・プロデューサー:リック・リッジェウェイ 
□撮影:ダニー・モダー 
□出演:イヴォン・シュイナード、ダグ・トンプキンス、ジェフ・ジョンソン、キース・マロイ、マコヘ、ティミー・オニール 他
□原題:180°SOUTH/2009年/アメリカ/カラー/1時間27分/HD/ヴィスタ/英語・スペイン語/デジタル
□提供:レイドバック・コーポレーション、キングレコード、グリーンルーム 
□共同配給:グラッシィ、スタイルジャム
□協力:パタゴニア   
□後援:アルゼンチン共和国大使館
©2009 180°SOUTH LLC.
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