『放射線が体に及ぼす影響 』
『放射線が体に及ぼす影響 』
放射線は体を通り抜けるときにDNAを壊して細胞死、もしくは細胞変異を起こします。
【大量に浴びると】 (6000ミリシーベルト以上)
体中の細胞が壊れて紅班や脱毛などの症状が出て、内蔵や皮膚が死んでいくという急性障害を起こします。
【ある程度浴びてしまった場合は】 (250ミリシーベルト以上)
徐々に細胞が死んでいき、ある程度の時間が経過してから白内障・癌・白血病などの晩発障害を起こす可能性がでてきます。
【少量の場合は】 (250ミリシーベルト未満)
細胞の修復能力(新陳代謝)でほぼ障害は出ません。
ごくまれに遺伝に関与するDNAが壊れることで遺伝障害を起こし、子孫の先天性遺伝病の確率が高くなることもあります。100ミリシーベルトの被ばくでその確率が0.1%アップすると言われています。
その放射線を出すヨウ素、セシウム、ウラン、プルトニウムなどの 『放射性物質』 が空気中に放出された場合は風でとばされ、雨で地表に落ち、重力で地表付近に堆積します。なので、現在福島原発周囲は現在立ち入り禁止となっているのです。
海に放出された場合は、海流にかき混ぜられ 、膨大な量の海水で希薄され、海底に沈んでいくので地表のように決まったエリアにとどまることはありません。ごく大量に入った場合でも数日で海底に沈殿し、さらに放射性物質が放射線を出す能力(=放射能)は水中では大幅に弱くなります。
多くの研究者が言っているように今のレベルで収束すれば地表に比べ、海はまったく心配のないレベルです。
『放射線量の数字について』
『放射線量の数字について』
しかし、報道を見ているといろんな数字が出てきて、わからない人が多いと思いますので、以下にまとめてみました。
【1 ミリシーベルト】
通常の生活で人工物から1年間に受けてしまう被ばく量の世界的平均(基準値)。
【2.4ミリシーベルト】
人間が通常の生活で自然界から1年間に受けてしまう被ばく量。
【100 ミリシーベルト】
短期間に受けるとがんの発症率が0.5%、遺伝病が0.1%増加する可能性が出る放射線量。平常時の原発作業員の被ばく限度。
【250 ミリシーベルト】
事故後に引き上げられた、ここまでは体にほぼ害がないと言われる原発作業員の被ばく限度。
【6000 ミリシーベルト】
致死量。東海村の被ばく者は17シーベルト=17000ミリシーベルト。
ちなみに飛行機での東京⇔ニューヨーク往復は0.2ミリシーベルト、胸部のレントゲンは0.4ミリシーベルト、CTは9.1ミリシーベルトです。
一度で基準値の9倍も被ばくしてしまうCTは怖くないですか!?
でも、この数値も短期間に11回受けて初めてがん発症率が0.5%あがる程度で、それ以下ならば体にまず影響はありません。それよりも体の状態を把握でき正しい対処法の判断ができるCTの利点がはるかにまさっているということです。
ニューヨーク往復もたしかに被ばくしますが、短時間に500往復してはじめて100ミリシーベルトとなりがん発症率が0.5%あがるというほどです。
加えて、この通りに放射線の影響が及ぶのはこれを短期間に受けたときで、通常生活で時間をかけて受けている場合は
・体は放射性物質を排出し、
・放射性物質は崩壊していき、
・体の新陳代謝で壊された細胞はリカバリーされていく
ので、影響はかなり減少するそうです。
人間の体は60兆個の細胞でできていて、毎日100億個が作られ、消えていきます。
放射能で壊された細胞もある程度までならばこの循環の中で体から消えていきます。
ただ、致死量の被ばくをするなどして、一度にものすごく大量に細胞が壊れてしまうとこの細胞の新陳代謝では間に合わなくなるのです。
みなさんの多くはチェルノブイリや東海村の被ばくした方の話や写真をみて、放射能に恐怖を抱いている方が多いようです。でもそれは極端に高濃度の放射能に短期間で被ばくした場合で、今報道されているものは私たちが普段の生活で自然に被ばくしているレベルに若干プラスされるかどうか程度です。
『海岸の放射性物質』
『海岸の放射性物質』
現在、海水の放射能濃度の調査は文部科学省が原発沖合い約10kmを船で調べるものと、東電が海岸で調べているものとありますが、サーフィンは海岸で行うものなので、東電による測定値をまとめてみました。放射性物質もいくつかあるのですが、その中でも他に比べ放出量が多く、よく報道されるヨウ素131の数値です。
【放射性物質】 ヨウ素131
【測定場所】 原発南放水口 / 岩沢海岸 (原発の16km南)
【濃度限度】 0.04Bq/cm3 (ベクレル)
濃度限度とは、この水を2L/日、1年間飲み続けて体に害が及ぶ可能性が出てくるという数値です。
【日付】 原発南放水口 / 岩沢海岸
【3/23】 5.9Bq(146.9倍) / 0.76Bq(19.1倍)
【3/24】 4.2Bq(103.9倍) / 0.5Bq(12.6倍)
【3/25】 50Bq(1250.8倍) / 0.37Bq(9.2倍)
【3/26】 30Bq(750倍) / 0.3Bq(7.6倍)
【3/27】 11Bq(275倍) / 0.29Bq(7.3倍)
【3/28】 1.4Bq(33.9倍) / 2.4Bq(58.8倍)
【3/29】 100Bq(2572.5倍) / 1.3Bq(31.9倍)
【3/30】 32Bq(800倍) / 0.88Bq(22倍)
岩沢海岸は朝しか観測されないので、上記のデータもすべて朝のものを使用していますが、午後の観測では報道されているような最高で4385倍(180Bq)という高濃度の放射能も原発南放水口から検出されています。
基本的に岩沢にいくまでには薄まりますが、3/28だけは濃度が上がっています。これはこの日は何かしらの理由で5,6号機放水口で33Bq(816倍)と高い放射能濃度が検出されたためだと思われます。
ここで使っているベクレルとは放射性物質が放射線を出す力(=放射能)の強さで、シーベルトとは放射物質が放出する放射線の量です。
『岩沢海岸の22倍の放射能とは』
『岩沢海岸の22倍の放射能とは』
ここで有名なサーフポイントでもある岩沢海岸で観測された3/30の数値をみてみたいと思います。
3/30の岩沢海岸のヨウ素131の放射能は0.88Bq/cm3でした。基準値となる0.04Bq/cm3の22倍です。
これをL(リットル)に直すとそれぞれ 880Bq/L と 40Bq/L です
この40Bq/Lの海水を毎日2L、1年間飲み続ける、つまり
【40Bq x 2L x 365日 = 29200ベクレル】
が基準値の1ミリシーベルトとなります。
100ミリシーベルトで発がんリスクが0.5%あがるので、ヨウ素131の放射能に置き換えると
【 29200 x 100 = 2920000ベクレル】
摂取すると0.5%上がることになります。
では、これが880Bqの海水の場合は
【2920000 / 880 = 3318L 】
の水を飲んではじめて発がんリスクが0.5%あがるということです。
これは、けっこうありえない数字ではないですか!?
22倍に汚染された海水を短期間に 【3318L】 も飲むことはありません。
万が一飲んだとしても発がん確率が 『0.5%』 あがるだけ、つまり現代の日本人の発がんリスクが50%といわれているので、それが50.5%になるというだけだそうです。
『汚染水はどのように流れるのか』
『汚染水はどのように流れるのか』
たとえ、『現状の汚染された海水を短期間に大量に飲んだとしても、体に大きな影響はない』ということがわかっていても、それでも汚染された海水にはできるだけ触れたくないと思います。そこで福島で流出した汚染水がどのように流れるかをみてみたいと思います。
以下の図は3/31の日本近海の海域図です。日本の東には親潮があり、冷たい水(青)を南に流しています。南には黒潮があり、温かい水(オレンジ~緑)を東に流しています。それとは別に海岸沿いを這うように流れてくる海流もあります。
下の図では福島あたりの冷たい水(青)が海岸沿いを伝わり、銚子を回りこんだところまで流れてきているのがわかります。しかしそのあたりで黒潮の暖かい海流(オレンジ~緑)にすべてかわっています。
三陸沖を南下する親潮のスピードは時速約1ノット(1.852キロ)程度なので、これを基準とすると原発付近の海水が銚子に到達するには約4日かかり、銚子で速度の速い黒潮(時速2ノット)とぶつかります。
ということは、『福島で流出した放射性物質は、銚子までの約200kmを4日かけて流れるうちに、かき混ぜられ、ほとんどは海底に沈み、どんどん薄まりながらも、銚子までは来ている可能性があるものの、そこで流れが速くて強い黒潮にかき消され太平洋に消えていく』と言えると思います。実際地震による東北からの漂流物は茨城までは多く見られるものの、九十九里では見られないのも、このためです。
『九十九里におけるサーフィンでは』
『九十九里におけるサーフィンでは』
以上をまとめると
・この汚染水が九十九里まで流れてくることは考えにくく
・もし流れてきたとしても海の浄化力で莫大に希薄され
・さらにはサーフィンでその海水を数千リットルも短期間に飲むことは到底考えられません
なので現在の状況で九十九里におけるサーフィンで被ばくをするということはかなりナンセンスだそうです。
私の知り合いの研究者もこれを大きく訴えたいそうですが、声を大にするとそれだけ反論する人も出てきて泥かけ試合になり、さらに不安を抱いてしまう人が出てしまうので、今は沈静化を待っているようです。また放射線の知識がある人からすれば 『報道』 が危険をあおっているとも見えるそうです。
『事故・放射能流出と、ごくわずかな放射線の危険性』のことばかりに焦点を置き、現在の放射線量が体に及ぼす影響のことを詳しくクローズアップすることはないのですから。
ある番組で解説者の「ほぼ害はない」という言葉に対し、キャスターが「ということは少しはあるんですよね」としつこく問いただしていました。でもそういう知識のないキャスターやジャーナリストの対応や詳しい説明のない東電や政府の発表が誤解を招くのだと思います。または報道では詳しい説明が省かれているのかもしれません。
日本気象学会も報道等で不用意に一般に伝わる可能性が大きいと、各機関に大気中に拡散する放射性物質の影響を予測した研究成果の公表を自粛するようにも通知しています。
『それでも「怖い」と思う人は』
『それでも「怖い」と思う人は』
この程度ではまったく心配する必要はないということと、その根拠がわかっていても、目に見えない放射性物質を怖いと感じる人も多いと思います。
その場合は
・巻かれたときなどに極力海水を飲まない
・サーフィン後は十分にシャワーを浴びる
・雨の後は河口に近いポイントに入らない
などを気をつけておけばいいのではと思います。
海は偉大な浄化作用で、放射能はどんどん希薄されますが、地表には堆積してしまいます。
なので雨のあとなどは地表の放射性物質がまったく危険なほどではありませんが海に流れてくる可能性はあります。
あまり怖がりながらサーフィンをしていても楽しくないですからね。
以上は僕が疑問に思ったことや、質問されたことについて調べたことをまとめたものです。また知り合いの研究者にいろいろな話を聞き、確認もしてもらいました。
ただし、放射能についてはまだ不確定な部分もあり、研究者によっても意見が異なる場合があるので、みなさんにはこれを一見解として参考にしてもらい、いろいろ判断してもらえればと思います。
それに加え、状況も毎日変化します。引き続き状況の変化に耳を傾け各自が判断していくことも重要です。
これを読んでくれている方は、みなさんサーフィンが大好きな方だと思います。
被災したサーファーのブログ等でも被災していないサーファーにはがんがんサーフィンして欲しいというようなメッセージも多くみられます。
この情報でみなさんが放射線に関する知識を得て、安心して大好きなサーフィンを楽しみ、それを活力としていただければと思います。
最後に今回の東日本大震災で被災した皆様に心よりお見舞い申し上げます。
宮城で被災した私の妹家族や、石巻に看護ボランティアに行った友人からも戦場のような現場やここでは書けないようなかわいそうな話も多く聞き、今回のことは本当に他人事ではありませんでした。
今、私たちひとりひとりが何をすべきかをよく考え、行動するときだと思います。がんばりましょう!
小林弘幸
(ENJOYサーフィンスクール代表、サーフィン虎の巻著者)
以下は参考になるので、ぜひ目を通してみてください。『余震にも気をつけてください』
『余震にも気をつけてください』
余震程度ではなかなか津波はおこらないようにも思えますが、一概にそうとは言えません。
それは津波が震度やマグニチュードよりも、断層が海底でどう動いたかに大きく関係するからです。
小さな揺れでも断層が上下に動いた場合は大きな津波が起こります。過去に三陸を襲った大津波の中には、揺れがぜんぜんたいしたことなかったものもあるのはこのためです。
逆に大きな揺れでも断層が左右に動いた場合は津波は起こりません。
もちろん、その地震で海底の断層がどう動いたかを即座に知ることはできません。
それに加え、震源が近い場合は、速度の速い津波はあっという間に海岸に到達することも考えられます。
報道で見るとそれほど速く感じないのは、津波は水深が深いところでは速く、浅くなると水が盛り上がりその分スピードも遅くなるためです。今回の地震の状況を見てみても、車で逃げようとしても渋滞で逃げられず、建物の上階に逃げても建物ごと流されてしまいます。即座に高台に逃げられる準備がとても重要となります。NSAがつい先日まで自粛を訴えていた主な理由は余震による津波による2次被害の防止のためです。
「余震じゃ津波は起こらないじゃん」と思って油断しないでください。
まだ千葉沖が震源となる地震の可能性もあるようなので。
サーフィンする際は必ず地元のショップなどでハザードマップを手に入れ、避難場所と経路を確認しておくなどの他に以下を気をつけるといいと思います。
① できるだけグループで、あまりばらけずに海に入る
② 防災放送のないエリアでは交代で誰か浜で携帯を持ち、ラジオを聴いているようにする (ついでにビデオ撮りをしてもいいと思います)
③ すぐ逃げられるように車に近いところで入る
震源が近い場合、あっという間に津波が来ます。
『報道の 「すぐに体に影響が出る数値ではない」』
『報道の 「すぐに体に影響が出る数値ではない」』
報道でよく聞く言葉ですが、これを聞くと 『じゃぁ、長期的には影響出るのでは?』と思いがちですが、そうではないそうです。
これは 『この程度の放射線を取り込んだところで、ただちに病気になるような量ではなく、時間とともに消滅して問題のない量』 ということだそうです。
さらに不安なのが長期的な見解を尋ねられたときの『長期的にも問題ないと思われる量です』という返答です。断定できないのは「絶対」ではないからです。100mシーベルトで0.5%発がんリスクが上昇すると言われています。たとえ基準値の1mシーベルトでも0.005%の可能性が絶対にないとは言えないからこの「思う」という言葉になってしまうそうです。
なので、「絶対か?」ときかれれば「絶対ではない」ということになり「=危険だ」と報道され、誤解されてしまうのです。
『がん発症の仕組み』
『がん発症の仕組み』
放射線の影響でがんリスクが上昇するのはなぜでしょうか。
人間の体は60兆個の細胞でできていて、そのうち毎日100億個が作られ、消えていくという新陳代謝を繰り返しています。
その中でなんと、がん細胞もみなさんの体の中で毎日のように1000~2000個ずつ作られているそうです。細胞が新しい細胞を作るときにミスコピーをするためです(すごい量にも聞こえますが毎日作られる100億個の1/10000000です)。
ただしリンパ球がシュレッダーとしてこのミスコピーをひとつ残らず消していくのでがんにはなりません。
ただしがん細胞が何かしらの理由で大量に作られるか(放射線で壊れた細胞によるミスコピーなどにより)、リンパ球が役目を果たさず免疫力が下がるとがんが発症するそうです。
100mシーベルトの放射線によって0.5%発症率があがるということは毎日作られる1000個のがん細胞が1005個になるというイメージでいいかと思います。
『海産物に対する影響』
『海産物に対する影響』
海水量は膨大で、放射性物質は拡散し薄くなり、大量に入った場合でも数日で海底に落ちていきます。
魚貝類も海水を飲むことで取り込まれますが、ほぼ尿やエラから排出されて蓄積はされません。体内に取り込んだとしても、ある程度の細胞は壊れるが放射性物質自体はの崩壊により消えていきます。ヨウ素131は8日で半減します。セシウム137の半減期は30年と言われますが実際の生物学的半減期は100日ほどだそうです。
海藻類はヨウ素を取り込みやすいがセシウムは蓄積しにくく、ヨウ素は半減期が短いので影響はすぐになくなります。
食物連鎖による濃縮も心配されますが、放射性物質は食物連鎖で濃縮されにくいので、継続的に放出されなければ影響はありません。
それに特定の場所で濃度が高くても、魚は一カ所にとどまらず、それほど多くの放射性物質を取り込むことはないそうです。
『地表の放射性物質』
『地表の放射性物質』
海水は偉大な海の浄化作用でどんどん攪拌され希薄されるので、いろんな報道を見ていても 『まったく心配ない』 というものがほとんどです。
それよりも空気中に舞った放射性物質が、雨で地表に落ちて、そのまま重力で土壌に堆積してしまうもののほうがよっぽど心配した方がいいようです。
みなさん、ひまわりを植えましょう!
ひまわりには放射性物質を根から吸って浄化する力があるとのことです。
チェルノブイリで行われた実験では20日間で95%の放射能がひまわりによって消えたそうです。
福島がひまわりだらけになるくらい植えられたらいいですね。
※日々変化する状況については小林氏のブログにても確認できます。http://ameblo.jp/scruz/