Fish Fry Japan 2010 ~フィッシュとオルタナティブ・デザインの祭典~
日本のサーフィン界の初夏の風物詩となった「Fish Fry Japan」リポート (6/7)
・日 時/2010.5.29 [Sat] AM8:00〜日没 ※雨天決行
・場 所/静岡県静波海岸
いまや日本のサーフィン界の初夏の風物詩となった「Fish Fry Japan」が、去る5月29日、静波ビーチの女神ポイントの駐車場で今年も賑々しく開催された。朝方は小雨が降り空模様が心配されてはいたものの、昼前から晴れ渡るという例年どおりの展開に。さらに、良くないとは言いながらも不思議と試乗可能な腰サイズの波があるあたりは、Fish Fryマジックと言ったところか。そんななか、昨年に劣らず今年も出展者、来場者ともに多数参加、例年よりも会場のスペースが広かったにもかかわらず、それでも出展者たちはビーチに溢れ出た。
昨年はアライアを中心とするウッドボードの色合いが濃く出ていたが、今年はその傾向がやや落ちつき、代わりにハルが少し台頭した感がある。とはいえ、オルタナティブ・ボードの祭典の趣きは相変わらずだ。昨年の流れでハンドプレーンも増えた。さらにマーク・トムソンが新作サーフマットMT5持参で来日し、ハンドクラフトではないものの、新たなるサーフギアの提案がなされた。しかし今年は、なによりも本来Fish Fryにあるべきフィッシュのデザインが、再び目立っていたようにも見えた。例年にも増して各出展ブースには試乗ボードが数多く並び、ひとりで数本テストする参加者もけっこういたようだ。
シェイパー勢も、海外からは3年連続皆勤賞のリッチ・パヴェルやダニエル・トムソンらを筆頭に、ダニエルの父マーク・トムソン、セイジ・ジョスク、マイケル・ミラー、イアン・ザモラ、そして初来日のライアン・ラブレースといった、ベテランから若手に至るまでがこの日のために来日した。日本人シェイパーでは、サーフィン界の第一線で活躍し続けている松本光二氏や三回目にして満を持して登場した川南活氏、お馴染みのアライアンこと遠藤勇一氏などをはじめ、有名無名問わず国内のフィッシュやオルタナティブ・ボードのデザインに熱い有志が一堂に会した。とりわけ、毎年出展を欠かさないガレージ系シェイパーやインディペンデントなブランドは、もはやFish Fry Japanの核と言ってもいい存在だ。専門誌のカタログに出てこない、こうしたシェイパーやクラフツマンのボードに触れる機会こそ、Fish Fryの醍醐味である。
いまや一言でフィッシュと言っても、オーセンティックなデザインのものから、スプリットテールを独自解釈したデザイン、ハルやミニシモンズからのアプローチなどさまざまだ。オルタナティブ・ボードのムーブメントの幅広さと奥行きを存分に感じさせてくれるバリエーションの豊富さは、まさにFish Fryの面目躍如といったところ。また、フィンレスやフィンを小振りにした新手のデザインなど、ポスト・アライアのコンセプトを追求しているデザインの流れもいくつか見られ、新しい方向性の模索が垣間見られた。トピックスとしては、今春日本上陸を果たしたカリフォルニアの旬のブランド、アーモンドもお目見え。また、最近シェイピングに勤しむタイラー・ウォーレンや、ボードデザインを手がけるクリスチャン・ワックといったカリフォルニアの若き才能も、個性と感性を詰め込んだそれぞれのボードを携え来場。いまをときめくタイラーやクリスチャンに加え、国内屈指のプロサーファーを交えたサーフ・スターたちのフリーサーフィンの競演に、ビーチは大いに沸いた。
オルタナティブ・ボードの愛好者やクラフツマンたちが主導するFish Fryだが、回を重ねるごとにイベントの主導者も微妙に変わりつつあるようだ。昨年以降、やや商業色が強くなった感は否めないが、これも日本ならではのFish Fryの進化のあり方なのかもしれない。もとよりイベントの本分であるシェイパー同士によるデザインやアイデアの交流・交換、個性の競演が、来年以降もっと増えることを大いに期待したい。そうした交流こそが、フィッシュをはじめとするオルタナティブ・ボード・デザインの世界をさらに進化させ発展させる、大きな原動力となるのだから…。
写真、取材&文:冨田隆