日本初のドキュメンタリー作品「The #1 / Champ Teppei」の完成披露試写会が開催された。(2/13)
たくさんのサーフィンの映像を配信している「サイファー・クリエイティブ」からJPSA全面協力の下、日本初と言われるドキュメンタリー作品「The #1 / Champ Teppei」が2009年2月23日に発売される。その完成披露試写会と懇親会が2月10日、東京は赤坂ガーデンシティで開催された。
多くの業界関係者やプロサーファーの河野正和、牛越峰統、浦山哲也らグランドチャンピオン経験者や3Tの中村昭太、関田秀俊。さらにチームジャスティスから川畑邦宏、伊藤勝則。ボルコムからは志賀美千代やジャパンの社員一同。音楽関係ではあのMicro や DJ Tsuyoshiも顔を見せ、華やかなイベントとなった。壇上ではサイファーの井澤氏、この映像を手掛けたPARUO氏。また初のシグネチャーDVDとなる主役の田嶋鉄兵の挨拶が行われ、その後に上映が始まった。
舞台は2007年、JPSA 茨城大洗「I.S.U 茨城サーフィンクラシック GOTCHA G-LANDカップ」から始まる。この年はこの茨城が最終戦。田嶋鉄兵と林健太のグランドチャンピオン争いは、この大会までもつれた。国内戦4連勝と好調だった田嶋鉄兵。誰もが初のタイトル奪取と信じて疑わなかった。しかし、プレッシャーでなんとクォーターで敗退するという自滅。あとは林の結果次第となり、試合を見守る田嶋と林のヒートが画面に映し出される。林は見事勝ち上がり、グランドチャンピオンが確定。海から上がり友人やギャラリーに祝福される林と対照的にうつむきながら軽く拍手をして会場を去る田嶋。この導入部で誰もがこのDVDに釘付けとなった。
映像を手掛けたのはPARUO氏。
左からPARUO氏、田嶋、MCのジョージ・カックル
映像を手掛けたのはPARUO氏。その映像はスポーツの勝者と敗者に存在するドラマを一切の演出なしに切り取り、残酷なまでにドライに表現。面目躍如のイントロダクションとなった。2002年に小野嘉夫のシグネチャーDVD「440」でデビューを飾ったPARUO氏は、その後「EXIT」シリーズを次々発表。サーフィンの映像に加え、見ている人を飽きさせない大胆な構成。特に人物のカット割りなど映像表現には独特のセンスがあり、誰もが引き付けられる作品を多く輩出している。
そのPARUO氏が初めて撮った密着取材ドキュメント作品。テレビでは、よく野球など一年を追いかけ、選手にインタビューするスポーツ番組があるものの、サーフィンでは初めてではないだろうか。一年というスパンで映像を続けるのは、費用的にも厳しいし、ましては結果のわからないものを撮り続けるのは根気のいる仕事でもある。実際、田嶋がグランドチャンピオンを取らなかったらこの作品はお蔵入りになる可能性もあったわけで、それだけにこの作品は奇跡的にもすべての歯車があった価値ある作品となった。
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田嶋鉄兵の人生が凝縮されている作品
田嶋鉄兵としても初のシグネチャーDVDということもあり、戸惑いもあったはずである。しかし、PARUO氏の情熱に呼応するように、作品の中で本音を語り始める。導入部の挫折からのスタート。そして、シーズンイン。初戦の茨城での優勝から始まり、鴨川、バリと転戦していく中での強気と弱音。そして、最終戦の宮崎までノンストップで映像は展開していく。大会をメインに最後に栄光を手にする田嶋がその時、何を考え、何を決断し、何をしたのか。またプライベート部分では、家族や自身の結婚と息子の誕生。プロサーファーという仕事について、自分が背負った義務と責任。赤裸々に語る田嶋がそこにいた。これはサーフィンだけでなく田嶋鉄兵の人生が凝縮されている作品だ。
この作品を見終わって、これはサーフィンを知らない人でも楽しめるものと実感。サーフィンというスポーツの素晴らしさ、競技の面白さを示した作品でもある。またコンペティションを目指す選手が見ても勝つ意義やプロサーフィンというものを改めて考えさせられるものとなっている。いいヒントがたくさんあるからぜひ見て欲しいと思う。
田嶋が、これから目指す目標は?
河野正和、浦山哲也、牛越峰統といったグランドチャンピオン経験者も来場
上映会終了後、田嶋に「もっと弱音吐けば面白かったのに(笑)。」と意地悪な質問したら、「いやー、もうあれでイッパイ、イッパイでしたから。」と笑顔。兎にも角にも田嶋は真面目。この一年間の密着取材は大変だったと思う。すべて一所懸命だから演技なんかできやしない。それがこの作品の面白さにもなっている。しかし、シーズン入る前にPARUO氏にグランドチャンピオン奪取宣言するあたり、大胆な一面も持っている。田嶋は思いっきりのいい男でもあるのだ。そして、この作品作りで掴んだのは、改めて自己分析をする大切さとそこからの自己管理。また自分を支えてくれる家族、スポンサー、ファンの人達を含め、すべての人への感謝を忘れない。
「最後にひとつ質問。目指す目標は?」「WCTです!」その答えは強く、そして自信を持って答えてくれた。田嶋は今、すべての結果を受け入れる準備ができた。それは良いものだけでなく、悪いものも含め、自分に起こるすべての事を受け入れるという心構えだ。真面目さが取り柄の田嶋が、太々しくも強さも手に入れた。今シーズンのスタートはすぐそこ。今年の戦いぶりが今から楽しみである。
写真撮影、リポート:山本貞彦
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