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カイ・オットン緊急来日スペシャル・インタビュー(6/3)
ASPワールドツアーランキング18位のカイ・オットンが緊急来日し、サーフメディアがインタビューを行った。あまり知られていない彼のバックグラウンドや、気になるサーフボードのトレンド、また今シーズン中盤から導入され始める新システムについてなど、ワールドツアーで活躍する彼の考えているところを聞いてみた。このムービーは、インタビューを約3分ほどに編集したもので、下記に全体を把握出来るようにテキストで掲載してあります。
ジュニア時代の獲得賞金総額は150USドルぐらいだと思う。本格的にサーフィンに集中したのは16歳ぐらいからじゃないかな。
SM:まずはカイのバックグラウンドとかを話してくれる?
僕はタスラというものすごく小さな田舎町で育ったんだ。人口は3000人ぐらい。シドニー空港から車で6時間ぐらい南にさがったあたり。もうビクトリア州との州境に近いあたり。波はそこそこかな。20キロぐらいの海岸線のあちこちにポイントがある。ビーチブレイクばかりだけど、僕の町とシドニーの間には、いくつかリーフブレイクもあるし。ほとんどのエリアがナショナルパークになってるんだけどね。
ボディボードを12歳ぐらいまでやってて、オヤジがサーファーだったから、彼がいつも僕がサーフィンしないことに不満を感じてて、サーフィンしろって僕をプッシュしてたんだ。で、ようやく12歳でスタート。オーストラリアじゃサーファーとしては、だいぶ遅いほうのスタートだよね。みんな5歳とかではじめるんだからさ。
しかも、そんな田舎町でって言うのもかなり特殊で、学校を卒業するまでは他のサーファーたちとはだいぶ違ってたと思う。ボードライダーズ(地域のサーフクラブ) もないし、試合だって1年に1回ぐらいしかないし、その一番近くのコンテスト会場だって、オヤジが車で最低2時間ぐらいドライブしてくれなくちゃ行けない。
オーストラリアにはプロジュニアシリーズってのがあるんだけど、それでいい成績を残したことがないんだ。その試合に出るのもハードだったね。ジュニア時代は、たぶん21歳までクオーターの一つ前までしか試合では勝ったことがなかったと思うよ。獲得賞金総額は150USドルぐらいだと思う(笑)。16歳ぐらいまではフットボールにかなり入れ込んでて、そっちにプライオリティを置いてたから、本格的にサーフィンに集中したのは16歳ぐらいからじゃないかな。
そして高校卒業したその日にシドニーに移住したんだ。サーフボード工場に仕事があったから。そこで仕事しながら試合に出たりして、インサイトにスポンサーしてもらってからWQSを回って、クオリファイするまで続けた。クオリファイは27歳のとき。
コンスタントにやれないってのが、ずっと僕の問題点なんだ。いつもひとつかふたつはいい成績があっても、それが1年間続かない。
SM:ツアーは今年4年目だけど、感触はどう?
ツアーは楽しいよ。ローラーコースターみたいにアップダウンはあるし、負けたときのストレスをどうマネジメントするかって問題もある。ケリー・スレーターやミック・ファニングみたいなサーファーとは違って、勝つより負けることのほうが多いわけだからさ。きっと彼らでさえ、負けるときのほうが多いんだろうけど。だってウイナーって、そんなにいないわけだから。優勝はひとりだからね。
その勝ったり負けたりをうまくコントロールするのが難しい。たとえば今シーズンは4年目だけど、5位という今までで最高のスタートをゴールドコーストで切れた。でもその後の2試合でひどい成績が続き、この先をどうにかしなくちゃならない。何とかして上向きにしないとならないんだ。楽しいけど、ハードだよね。おとぎ話のようにはいかないよ。
旅そのものはWQSのときにさんざん経験してるから、それがそんなに問題になることはないけど、コンスタントにやれないってのがずっと僕の問題点なんだ。いつもひとつかふたつはいい成績があっても、それが1年間続かない。だからWQSの時には、クオリファイする年までずっといつも50番台あたりをウロウロしてた。クオリファイしてからはWQSを回ってないけど、相変わらずタフだよね。スーツケースの中に住んでるようなものだもの。でも悪いことばかりじゃないから、その辺はポジティブに考えたいね。
観客の動員数に支えられるようなスポーツでは、どう考えても試合規模を小さくするっていうのは納得がいかない。だから僕はこれにはあまり賛成できない。
SM:今シーズンから新しいシステムが導入されるけど、どう思う?
新しいツアーシステムに関しては、まだ流動的な部分がたくさんあると思う。今決まっていることが動き出して、来年、そしてその先、何がどう変わるのかは、誰にもわからない。ただ、僕は参加人数を減らすってのは、正解ではないように思う(トップ45からトップ32にフォーマットを変えること)。世界中のどんなスポーツだって、参加人数を減らすという方向には向いていないと思うんだ。もちろんサーフィンは自然相手の特殊なスポーツだけど、たとえばフットボールみたいなほかのスポーツはもっとチームをふやそうという方向に向いてる。
まぁ、ウエイティングピリオドがあって、波を待って、みたいな部分では人数が少ないほうがやりやすいっていうポジティブな部分もわかるけど、キャラリーにとっては見られる選手の数が減るっていうのはネガティブな要素だと思う。お気に入りの選手がカットされてしまうかもしれないし、たとえば日本人の選手が入れるチャンスも狭まるわけだから。観客の動員数に支えられるようなスポーツでは、どう考えても試合規模を小さくするっていうのは納得がいかない。だから僕はこれにはあまり賛成できない。まぁ、賞金の部分では、そのツアーにいる選手にとってはいいけどね。だって少ない人数で分けることになるから、ひとり当たりの賞金額は高くなるわけだから。
年に2回とか3回とか入れ替えがあって、チャンスが多くあるように見えるけど、でもその32人はとんでもなくうまいサーファーなわけで、結局同じ選手がずっとそこにとどまるようなことになると思う。だって彼らにはふたつチャンスがあるから。WQSだけじゃなくてWTでもポイントってのもあるわけじゃない。わからないけど、実際に動き出してみてから、ポイントのブレイクダウンを変えたり、みたいな調整は必要になると思うよ。とにかく今は動きだしてどうなるかを見てみないと、誰にもわからないんだ。残念ながら今シーズンはWQSからのクオリファイは実質難しいだろうし……。
SM:今回の来日はサーフボードのプロモーションだよね。
たぶん日本には2005年に来たのが最後で、最後のマリブでの日本のWTのときは、まだ僕はクオリファイしてなかった。前回来たのは、確か伊良湖かどこかの4スターだったと思う。日本はいいところだし、日本食もおいしいし、しばらくぶりに来てみたかったんだ。今回のボードのプロモーションに僕が来ることは、シェイパーのマットにとってもいいことだし。
もっとFCSを積極的に使いたいと思ってるので、その辺をいま話し合ってる。次のレベルにいくのにフィンのセッティングを少し考えようと思ってるんだ。
SM:サーフボードはいつもどんなものを使っているの? 板をオーダーする時は特別なリクエストをするの?
オールラウンドに使ってるボードは6‘1“x 18 1/2’ x 2 3/8‘ 。ツアーに入って3年ぐらい6’2”だったんだけど、今年は少し短くした。ケリーがあの短い変な板に乗り始めてから、ツアーのみんなは全体的に少し板を短くしたように思う。ま、僕はあんな短い板には乗れないけど(笑)。波がよくないときとか、ただ楽しむサーフィンをするのに使うファンボードは、このワイドな5‘6“で幅は19 1/4”。
ボードを削るときにシェイパーにリクエストすることはいくつかあるけど、今はもっとFCSを積極的に使いたいと思ってるので、その辺を今話し合ってる。次のレベルにいくのにフィンのセッティングを少し考えようと思ってるんだ。
僕の板はとてもスタンダード。いくつか違うカーブを使ったものがあって、モデルは基本的には3種類ぐらいかな。その中で、厚くしたり薄くしたり、いろいろディテールを変えてみてる。
たくさんの板に乗るよ。たぶん年間には60本とか70本とか。家には20本ぐらいあるかな。ラミネートが薄いからすぐに折れちゃうし、古くなっちゃうし、常時入れ替わってるけど、大体20本ぐらいはあるね。一番長いので7’0”かな。短いのはファンボードの5‘6“。
ツアーにはいつも5本ぐらい持っていく。あまり短い板は持っていかないね。このオールラウンドな6’1”に加えて、6’0”、6‘3“ってあたり。もう少し減らしたいね。4本ぐらいでいいんじゃないかなと思ってる。タヒチみたいな場所なら10本は持っていくけど。
SM:ワールドツアーで主流になっているサーフボードってどんなもの?
ツアーではやっぱりまだ僕の6’1”みたいなノーマルな板が主流だけど、たとえば波がグチャグチャだったり、小さかったり、クリーンコンディションでないときや、たとえばトラッスルズの2フィートとかみたいな時には、みんなへんてこりんな短い板に乗り始めるよね。ケリーはまだだいぶ短い板に乗ってるけど、波がよくなればノーマルの板に戻してくる。だからそんなに変わった板が流行ってるという感じではないんだ。
サーフボードって言うのはとてもパーソナルなものなので、これがいいって言う風には一概に言えないけど、日本だったら短くて厚めの板がいいんだと思う。そういう波の日が多いし。でもコンディションも変わるわけだから、可能なら2本ぐらいの板を揃えておいたほうがいいんじゃないかな。
でも1本というなら、フォーカスっていうこのボードがお勧め。小さな波から頭ぐらいの波までオールラウンドにこなせる板だから。
SM:今シーズンのプランがあったら聞かせてくれる?
いつもヒート直前にちょっと考えるぐらいで、今シーズンはこれ、みたいな特別なプランはないんだけどね。ま、出だしはよかったけど、そのあとふたつダメだったんで、次のJベイでしっかりやらなくちゃいけないとは思ってる。
年間を通していい成績で終わったことが一度もないから、そこを何とかしたい、そうすれば、かなりいい成績が残せると思うんだ。トップテンをうかがうようなところにいても、次の試合でダメでドンと落ちたりしてね。一貫性がないのが僕のダメなところ。それは当然メンタルな部分の問題も大きいと思う。でもコンディションのよくないときのサーフィンがちょっと苦手なんだ。そういう波をうまくのりこなせない。
たとえば今シーズンのベルズみたいに、コンディションがジャンクになると思うようにいかない。もちろんやれないわけじゃないけど、そういうのは得意じゃないんだ。でも、そこを何とか克服して、年間を通していい成績を残して、なんとかトップ10を狙いたいね。
好きなのはホローなリーフブレイク。タヒチとかパイプとか。でも妙なことに僕がサーフするときはパイプは一度もレフトの波だったことがないんだ。いつもスモールなライト(バックドア) ばっかり。4年間でパイプでレフトに乗ったのはたぶん2本だけかな。でも、ライトのポイントでもいい成績を残してるから、それが問題じゃないんだけどね。だって、スナッパーやJベイでもいい成績があるんだからさ。でも、できれば今年はパイプの良いレフトに乗りたいね。
一貫性がないっていうのが、場所によって得意不得意っていうのと結びつかないんだ。同じ場所でもいいときと悪いときがある。そこがね……わからないんだよな、なんでなのか。まぁ、9月のトップ32のカットを心配する必要のないランキングにいるから、いいし、プライムイベントをあわてて回ることもないんだけど、そんなことになったら大変だろうな。今までうまくやれたためしがないんだから(笑)。
最後に新システムのポイントのキャリーオーバーの問題を聞いていみました。
今シーズンからポイントのキャリーオーバーが出来るようになりました。たとえばパイプのWTで得たポイントは来年のパイプまで1年間、自分のベスト8のポイントにキープして置けるようになります。
今までなら、WQSサンセットで得たポイントはその年のランキング、そしてそれによる翌年のシードにかかわるのみで、翌年のポイントは昨年のランキングによってつくシードポイント(もち点)からのスタートでしたが、その年度ごとの区切りがなくなります。最初に確認したのは、その部分で、それがワールドタイトルでもキャリーオーバーできるのかどうかということです。
答えはワールドタイトルは別物で、その1年間の10試合のポイントのみで決まります。しかし、そこ(WT) で得たポイントはワールドランキングのランキングを決めるのには(シーディングという言葉を使っています) 使えるということ。
もうひとつ確認で、じゃ、たとえばマーが昨年のように最初の何試合かすごく成績がよかったら、その時点でクオリファイのタイミングが合えばクオリファイなんだよね。という確認。答えはイエスです。
インタビュアー:つのだゆき
取材協力:サーフハードウエア・インターナショナル