ジャパンプロサーフィンツアー2009ロングボード第4戦「茨城鉾田プロ」
写真撮影、取材&文:池田潤
ジャパンプロサーフィンツアー2009
ロングボード第4戦
茨城鉾田プロ
開催期日/8月21日(金)~23日(日)
※21日(金)プロトライアル
開催場所/茨城県鉾田市 とっぷさんて下
主 催/日本プロサーフィン連盟(JPSA)
後 援/茨城県・茨城県鉾田市
8月22日より、茨城鉾田プロ、メインラウンドスタート。朝一はグラッシーな三角波の絶好のコンディション。その後は、一時オンショアとなるが、午後からは風も弱ま、コンディションが安定。
翌23日の決勝日も、朝一は軽いオンショア、その後は、ほぼ無風の胸、セット肩のエクセレントコンディション。会場となった、茨城県鉾田市 とっぷさんて下ポイントには、大きなTバー型の堤防があり、安定したサンドバーが作り出す、クリーンな波が特徴のサーフィンビーチ。
大会会場では大会を通じて、長めのフェイスの大きなライトハンダーと、トリッキーな掘れ方をする短いレフトハンダーにてコンテストが行われた。
大会初日の21日はアマチュア選手によるプロトライアルが開催され、全国から多くのトップアマチュアがエントリー。初日のトライアルを勝ち抜き、2日目の本戦に進み、プロとのラウンドを勝ち進んだ、アマチュアサーファー4名の石井勇貴、佐藤広、栗原卓義、塩川増美がプロに昇格した。
女子セミファイナル1
植村未来、小熊明美、古市陽子、梶岡恵子
古市陽子
茨城鉾田プロ女子の結果から。
毎回、優勝者が変わる、激戦の女子ロングボードディビジョン。強豪達は、安定した実力を見せつけ、順調に勝ち上がった。植村未来、割鞘ジュリ、小熊明美、塩川増美、島尻祐子、古市陽子、大橋寛子、梶岡恵子の8名がセミファイナルへ。
植村、古市の2名は、今シーズンのjpsaサーキットの優勝経験者、そしてa.s.p.世界選手権シード選手の実力者。それに対するは、地元茨城をホームにする小熊、梶岡の2名のローカルサーファーの戦い。
ヒート序盤から、第2戦の優勝者、植村がバックハンドのハングファイブからバックサイドリエントリーを決めて、安定した実力を見せラウンドアップ。地元茨城の小熊は一人左に離れて波を待ち、良いセットの波をつかむが、なかなかポイントが伸びずに惜しくも敗退。同じく地元茨城の梶岡は小さめの波をつかみ、ノーズライディングを見せるが、クローズアウトセクションでのワイプアウトが目立ちラウンドアップならず。
2位には後半、第1戦の優勝者、古市が本来の実力を出し、セットの波をつかみノーズライディングから奇麗なローラーコースターを見せてラウンドアップ。植村と古市の両名が、ファイナルに駒をすすめた。
セミファイナルヒート2
島尻祐子、大橋寛子、割鞘ジュリ、塩川増美
割鞘ジュリ
a.s.p.世界選手権シード選手の島尻。第3戦優勝者で、jpsaランキング争いトップの割鞘。ラウンド1を1位で通過の実力者大橋。そしてアマチュアから今大会でプロ資格を得たルーキー塩川の戦い。
割鞘は素早いテイクオフから深いボトムターン、そしてカービングを見せてラウンドアップ。テイクオフの早さとしっかりとしたテールサーフィンでは、一人抜きん出た実力を発揮。ファイナルへ駒を進める。
ラウンドワンでは、セットの波でビックフローターを決めていた浜松の大橋は、惜しくもクローズアウトセクションでのワイプアウトが目立ち、惜しくもここで敗退。
ここまで、奇麗なターンからのノーズライディングで勝ち進んできたルーキー塩川だが波回りが悪く残念ながら、このラウンドで姿をけした。
ヒート後半、実力は折り紙付きの島尻が、深いボトムターンからノーズライドを見せて今シーズン初のファイナルに駒を進める。
ファイナル
植村未来、古市陽子、島尻祐子、割鞘ジュリ
島尻祐子
島尻以外は今シーズンのjpsaロングボードサーキット優勝経験者。
ヒート前半は植村がバックサイドハングファイブからバックサイドリエントリーを安定してきめてヒートをリード。割鞘も負けじと、深いボトムターンからのトップターン、そしてノーズライドで応戦。古市、島尻は中盤までなかなか良い波をつかむことできず、ポイントをのばす事ができない。
中盤まで全く良い波をつかむ事ができず、4位に甘んじていた島尻が、ヒート後半戦に入ると反撃開始。レフトのセットの波をつかむと、大きなボトムターンからハングファイブ、ハングテンそしてフローターで一気に大逆転で1位にポジションを上げる。その後もバックアップのスコアもまとめて、ヒート終盤で独走態勢にはいり、そのままヒートは終了。島尻が嬉しい、初優勝を決めた。
ここまで4戦行われた、女子のjpsaロングボードサーキットは毎回優勝者がめまぐるしく変わる展開。グランドチャンピオン争いは割鞘が一歩リードしているが、この大会で、シーズン最終戦に向けて、グランドチャンピオン争いの4強が出そろうこととなった。
第3戦をスキップした世界選手権組がサーキットに戻ってきて、ロングボードプロ初代の女王争いは、熾烈を極める展開へと進んでいる。
総合優勝争いは5戦中、4戦の良いスコアが集計されて決定される。
最終戦の結果次第で、まだまだ誰が初代ロングボード女王になるのかは予測不能。最終戦からは目が離せない展開となっている。
最終戦の日程等はhttp://www.jpsa.comでチェックしてください。
男子クォーターファイルヒート1
ケコア・ウエムラ、吉川祐二、石塚晃、阿隅寛典
ケコア・ウエムラ
昨年度のグランドチャンピオンであり、同じ週の前半に福島北泉で行われた、a.s.p.のムラサキプロ北泉でも優勝して波に乗る、ケコア・ウエムラが安定した、実力を見せてヒートをリード。
バックハンドのハングファイブからの、ハングテンそしてバックサイドでのバーティカルなオフザトップとカービングカットバックを武器にポイントを重ねセミファイナルにラウンドアップ。
鵠沼のベテラン石塚晃がこれに対抗。ハングファイブ、カットバックそしてフィニッシュにテール360°ターンを決める、トリックスターぶりを見せつけ会場を沸かせセミファイナルへとラウンドアップ。
吉川祐二も抜群の安定感でロングボードらしいクラッシックなラインで対抗するが、ポイントが伸びずにここで敗退。浜松の阿隅はラウンド3でインターフェアをはね除けラウンドアップをはたした、ダイナミックな全身を使ったサーフィンを見せたが、トップ2には及ばず敗退。
QFヒート2
吉田泰、喜納元輝、秋本祥平、辻嶋司、
吉田
ヒート中、フローターした時にボードを折ってしまった、宮崎のヤングガン秋本だが、バックアップボードですぐに復活。コンテスト会場左側からくる、ライトハンダーのセットに照準を絞り、素晴らしいコンビネーションで一位通過。
2位には、喜納がバックサイドの長いノーズライドとバックサイドバーティカルターンを見せつけ楽々とヒートアップ。鵠沼の辻嶋は奇麗なドロップニーカットバックとノーズライドのコンビネーションで応戦するが残念ながらここまで。クラシックスタイルを貫く、吉田はスピードあるノーズライドの良いサーフィンを見せたがここで敗退。
QFヒート3
ユージン・ティール、鈴木剛、デビット・木下、宮内謙至、
デヴィット
バリエーション豊富な技を武器に戦う、ユージンが前半からヒートをリード。ノーズライディングから十八番のレイバックスラッシュ、そしてフローターで1位通過。
2位争いはベテラン、デヴィットと宮内の同点での大混戦。宮内が同じスコアながらカウントバックで辛くも勝利。デヴィット木下が、僅差で破れる。ラウンド3まで素晴らしいサーフィンを見せていた鈴木だが、強豪選手達に挟まれ、普段の強気なヒート運びができず、残念ながら、ここで敗退。
QFヒート4
森大騎、鈴木康弘、瀬筒裕太、畑雄二
ルーキー畑
森、瀬筒、畑の若手3人と、3人とは20歳以上年齢の離れているベテラン鈴木の対決。ヒート開始直後から瀬筒が、セットの波をクラッシックスタイルで攻めてヒートをリード。森も得意のテイクオフ直後からのハイスピードウォーキングからのノーズライドとスタンスを広く取った安定感あるバーティカルオフザトップで対抗。
2人がセットの波をほぼ独占してヒートは進行。良い波に乗れば確実に得点を出す実力者、宇佐見の鈴木も波運に見放されここまで。昨年プロ合格を果たした、大阪出身千葉在住のルーキー畑も残念ながらセットの波をつかめずここで敗退。
セミファイナルヒート1
ケコア・ウエムラ、秋本祥平、宮内謙至、瀬筒裕太
宮内
ヒート開始直後から瀬筒が一貫してコンテスト会場、左側のライトハンダーを狙い、クラッシックなノーズライディングでスピードあるサーフィンを見せる。
ケコアは基本的にはバックハンドのノーズライディングからカービングターン、バーティカルオフザリップのコンビネーションで波を攻める。
ヒート後半になると、早めにブレイクするクローズアウト気味のレフトハンダーをつかむとフロントサイドのバーティカルオフザリップもまじえてポイントを重ねてヒートをリード。
会場からため息がもれるほどの、ターンのクオリティーを見せつけて、楽々1位でファイナルに。一貫して、ぶれないサーフィンを展開した瀬筒が2位でファイナルへ進出。秋本、宮内も実力を発揮したが、上位2人には惜しくも及ばず、僅差で敗退。
セミファイナルヒート2
ユージン・ティール、森大騎、石塚晃、喜納元輝
喜納
第1戦の優勝者、森が素早いテイクオフからハングファイブ、ハングテン、ラウンドハウスカットバックそしてフローターで前半に得点を重ねヒートをリード。今大会絶好調の石塚も安定したライディング反撃開始。ユージンもノーズライドから、得意のレイバックスラッシュ、フローターを交えてロングライドで応戦。
ヒート終盤、それまで得意のオフザリップとカービングを見せていたがポイントが伸びていなかった、喜納がセットをつかむと、バックサイドのノーズライディングからのバーティカルオフザトップでエクセレントスコアを連発。最後のライディングでパーフェクト10もスコアしてブッチギリの19点でファイナルに進出。2位にはセットの波でコンビネーションを決めた森が16.2のハイスコアでファイナルへ。ユージンと石塚も6点代を2本、まとめたハイスコアを出したが、若手2名のエクセレントな高スコアの前に敗退した。
ファイナル
ケコア・ウエムラ、瀬筒裕太、喜納元輝、森大騎
森大騎
ファイナルに進出した4名はいずれ劣らずの若手実力者。ケコアと喜納はハワイからのエントリー。瀬筒と森は千葉太東からのエントリー。ケコアが82年生まれ、残りの3人は89年生まれの80年代生まれの「ジェネレーションY」対決である。
91年にスタートしたjpsaサーキットも、本格的な2度目の世代交代の時期を向えて、確実に3世代目に世代交代していることを象徴するファイナリストの面々となった。シングルフィンのグラスフィニッシュのノーズライダーに乗り、ハイスピードなネオクラシックなスタイルのノーズライディングで一貫したスタイルを貫く瀬筒。
瀬筒
ケコア、喜納、森は、世界のロングボードコンテストの標準となる、サンディングフィニッシュの2+1フィンセットアップのハイパフォーマンスロングボードで、最新のバーティカルサーフィンを見せる。
3人は、ノーズライディングからのハングファイブ、ハングテン、ラウンドハウスカットバック、バーティカルオフザトップを武器にこれまでのヒートを勝ち上がってきた。
特に森は、ここ数年でものすごい勢いで進化を遂げている。特にハングテンの精度とバーティカルオフザトップの時の広いスタンスの取り方などが目覚ましい進化を遂げている印象である。
森大騎
ファイナルヒートはまさに目が離せない戦いであった。ヒート序盤は、シングルフィンのスタイリスト、瀬筒がスコアを早々とまとめヒートをリード。それに森も続きセットの波でフロントサイドのノーズライディングからラウンドハウスカットバック、そしてクローズアウトセクションでリエントリーで追撃する。
ヒート中盤、ライトハンドのセットの波をハワイコンビがバックサイドで応戦。ヒート後半に入ると、森がフロントサイドの利点を生かし、セットの波でエクセレントスコアをスコアして引き離しにかかり、ヒートをリード。その後も国内最新最高峰のマニューバー合戦が繰り広げられたが、森が30分ヒートで最後まで、リードを守りきり、ヒートは終了。若干20歳になったばかりの森が、嬉しいjpsaサーキット2勝目をあげた。
森はこの勝利でjpsaロングボードサーキットグランドチャンピオン争いでもトップに立ち、初のグランドチャンピオンに王手をかけた。
今回のコンテストは、若手の台頭が目立つ結果となった。技術面では、ノーズライディングではハングテンでダウンザライン。そしてテールでのボードコントロールはショートボード並みの、カービングターンとバーティカルオフザトップのコンビネーション。
それらにプラスして、タクティクス、体力がすぐれていないことには、シード上位のヒートを勝ち抜くことは難しい。
現在、ランキングトップの森大騎のグランドチャンピオン獲得が濃厚となったが、まだまだ最終戦のオールジャパンプロの展開によってはどのようになるのかは最後までわからない。
最終戦、オールジャパンプロの開催日時等はhttp://www.jpsa.comでチェックして、ぜひ会場で熱い戦いを観戦してみよう。日本最高峰のロングボーディングを実際に目にすれば、その進化が実感できるはずだ。
以上
レポート 池田潤
詳しくはJPSAホームページをご覧ください。