加熱するウェイブ・プール市場。ケリー・スレーターとグレッグ・ウェバー、それぞれが主張する循環ウェイブ・プールとは(11/29)

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加熱するウェイブ・プール市場。ケリー・スレーターとグレッグ・ウェバー、それぞれが主張する循環ウェイブ・プールとは(11/29)


▲ケビン・ロバーツのサーフィン・リング

▲ケリー・スレーターのウェイブ・カンパニー

▲グレッグ・ウェバーのウェイブ・プール


 先日、前人未到の記録をさらに更新する11回目のワールド・チャンピオンに輝いたケリー・スレーター。そのケリーが、ウェイブ・プールを擁するサーフ・パークの計画を進めていることは今や周知の事実だが、このプロジェクトを巡って一部ネット上ではやや厳しい見解が示された。

 11月17日のswellnet.comの記事では、ケリーの進めているウェイブ・プールが、オーストラリアのシェイパー、グレッグ・ウェバーがすでにアメリカで特許取得済みのウェイブ・プールとデザインなどが酷似している点を指摘した上で、さらにケリーが特許取得に苦労していると伝えている。記事によると、ふたりの循環ウェイブ・プールのコンセプト(循環型の丸いプールの真ん中に小さい島があり、その周りで波が割れる)はそっくりであるという。実際に特許を考慮し、ケリーがウェバーのプールとまったく違う装置を開発設計する必要があるのなら、2014年に実現可能とするケリーの計画はまず難しいだろう、とも分析している。

 実際にウェイブ・プールに関してはウェバーの方が早くから取り組んでいたことは事実で、2005年にアメリカ特許商標局から特許を取得している。アメリカ以外でも中国、日本、オーストラリアでも特許を取得しているという情報もある。特許取得後、ウェバーはウェイブ・プールを商業的に進展させるために「Liquid Time」という会社を設立し、実用化に向けて大学の研究機関などの協力も得ながら本格的に開発を進めてきている。swellnet.comの記事は、こうしたウェバーのアドバンテージを強調し、ケリーのプロジェクトに対しては一貫してやや冷ややかな論調で書かれたものだった。

 この記事が出てから1週間後の11月24日、今度はケリー自身がthe inertia.comでswellnet.comの記事に対する抗議文めいた記事を掲載した。ケリーはswellnet.comの記事は一方的な見解だと反論。ウェバーも初回の申請では特許が下りなかったことや、ケリーの特許も11月22日の時点では21の申請中、18の申請が認められたことを明かした。そして改めて、ウェバーのテクノロジーとは異なるものであることを主張。さらには5、6年前にオーストラリアのクーランガッタで、ケリーとウェバーがウェイブ・プールについて話し合ったとも語っている。ただこのとき互いが真剣に手がけていることは知らなかったようだ。「ウェバーも競合を歓迎している」とケリーは言い、「近い将来どちらかが、もしくはふたりが、誰もが楽しめるウェイブ・プールを作るだろう」と前向きに語っている。

 そもそもこの循環ウェイブ・プールに関しては、アメリカの発明家アーノルド・フォースマンが1975年に特許を取得していたが、その期限が切れた時点でこのアイデアは公のものとなっている。現在、ウェバーとケリーの他には、ケビン・ロバーツが2001年に循環ウェイブ・プールのアイデアを思いつき、特許取得を済ませている。ロバーツはマット・ケックルを通じてケリーと知り合い、2006年から3年間に渡り、ケリーのプロジェクトの開発にも関わった人物だ。ただ最終的には追求するコンセプトの方向性の違いからロバーツはケリーから離れることになるが、仲違いをしたわけではないという。
 いっぽうのウェバーは、2005年に特許取得した際にロバーツに連絡をとり、自分も開発を進めていることを話している。ロバーツは、ウェバーよりも4年も早く循環ウェーブ・プールを手がけて特許を取得しているが、互いに独自にアイデアを思いついたとして、ウェバーのことも受け入れているようだ。

 ケビン・ロバーツによると、彼とケリーが出会った数ヵ月後の2006年3月31日に、クイックシルバーのCEOであるボブ・マクナイトの呼びかけにより、ダナポイント・オシャノグラフィック・インスティテュートで極秘のミーティングが催されたという。これはロバーツの開発した循環ウェイブ・プールの縮尺モデルをサーフィン界の重鎮たちに見せるための会合で、ケリーはもちろん、ショーン・トムソンやパット・オニール、アル・メリック、ロブ・マチャド、パット・オコーネル、マーティー・ホフマン、トニー・ホークといった面々が一堂に会したというのだ。だとすると、サーフィン界のごく一部のキーパーソンたちは、ウェイブ・プールの将来的な可能性やベンチャー・ビジネスとしての価値を、このときすでに感じとっていたのかもしれない。

 テクノロジーと手法は異なるものの、スペインのウェイブ・ガーデンも来年には一般に開放されるという話もあり、ウェイブ・プールを巡るこの種の話題は、2012年以降のサーフィン界を賑わすトピックスのひとつになることは間違いないだろう。ケリーもウェバーも各々のテクノロジーの独自性を主張しつつも、互いを認めあっているようである。事実ウェバーはケリーのウェイブ・プール市場への参入を歓迎しているという。
 そう遠くない将来、世界各所に循環ウェイブ・プールを擁したサーフィン・テーマパークが開設される日が来るかもしれない。いずれにしてもサーファーとしては、延々と続く文字通りパーフェクトな極上のマシーン・ウェイブを、早く味わってみたいものだ。

texy by takashi tomita